顎に手をもってくると微かに匂うフローラルの香り。


遊び半分で買った香水の匂いだ。


手につけてみたはいいものの、匂いがきつくて急いで洗ったんだっけ。


クンクンと嗅いでみる。


「···まだとれてないし、」


反射的に手を顔から遠ざける。


こんな物を付けて男に言い寄る女はすごい。


香水の匂いと同時に大人な香りがして同じ女だと思えない。


大人に一歩でも近づけると思って試してみたんだけど、結局まだまだ子供の私。


煙草と香水の匂いが充満しててどこまでも悪すぎる空気。


絵の具みたいに混ざりあって、最終的にはどんな匂いか言い表せない。


そんな濁った空気を定期的に吸っているここの住民たちは、いつか悪い何かにとり憑かれそうだ。


そんなよく分からないことを想像しながら、彼らに視線を戻す。