「#春樹__はるき__#さーん、大西商事の坂上さんから2番お電話入ってます!」

「ありがとうございます。」
パソコンのキーボードから右手の指を離して受話器を取り、左手で赤色に点滅している「2」のボタンを押し電話に出る。

「いつもお世話になります~。お電話替わりました春樹です~。…ええ、その件でしたら11月末には…」

僕は都心から少し離れたところで、サラリーマンをしている。
静かな街だけど、都心も郊外も事務所の煩雑とした雰囲気はどこも変わらないかな。

<コーンコーンコーン>

12時を告げるチャイムが鳴った。
外へバラバラとランチをしに出ていく人と、席でお弁当を食べる人、昼休みも取らずに仕事に没頭している人がいる。

「たけちゃん行く?」
#畑中__はたなか__#が親指を外に向けてクイクイしながら声をかけてきた。
#畑中哲也__はたなかてつや__#は、明るくて、少し体育会ぽい性格の同期。入社してから、初めはデリカシーのない苦手のタイプだと思っていたけど、今じゃ何でも話せる唯一の人かな。

「ごめん。朝買っちゃたんだ。」
菓子パンの入ったコンビニのレジ袋を見せた。

畑中は寂しそうな顔して「体壊すぞー。」と言い残して外に出て行った。

外は少し肌寒いが、僕の懐はもっと寒いや。

パンを食べる前にさっきの電話の内容Todoリストに入れておかないと。
デスクに向かい直し、Todoリストをクリックし、大西商事坂上様…

「あの…春樹君今日は中でご飯なの?」

ピクッ!!

急に後ろから声を掛けられてびっくりして振り返ると#高島__たかしま__#さんがいた。
#高島麻美__たかしまあさみ__#も、僕と同期だ。
見た目は、栗色でセミロングの髪の毛がクルンとカールしているのが特徴的で、動物に例えるならリスに似ている。
人をリスに例えるのも失礼かもしれないけど第1印象がリスだったんだから仕方ない。

高島さんは畑中と違って距離感が難しい。
というのも、自分も#ド__・__#がつく内気な性格だが、そんな自分から見ても高島さんは相当な内気な性格の持ち主だから、沈黙が怖くてあまり2人にならないようにしている。

「高島さんビックリしたよ。」

「ごめんなさい。」
高島さんは頭をペコリとさげ、栗色の髪がふわっと浮いた。