「凪と一緒に登校したくて待ってたんだ。」

「言ってくれれば中で待ってもらったのに。」

「まだ、ちゃんと挨拶してないからね。」

「えっ?」

「ほら行こっか。」

「わっ!」

そう言って霞くんは私の手をぎゅっと握る。

「……霞くん?」

「どうかした?」

私は霞くんの両手をぎゅっと握る。
予想していなかったのか、霞くんは私の行動に驚きを隠せないでいた。

「な、凪?」

「……から」

「えっ?」

「いつから待ってたの?」

「……どういう意味?」

「いつから玄関の前で待ってたのか聞いてるの!」

「えっと……い、……30分前かな?」

「1時間も前から……。」

握った霞くんの手は氷のように冷たくて。
この寒空の中1時間も待ってくれてたなんて……。

「これ、つけて。」

私は自分のつけていた手袋を外して霞くんにつきつける。

「でもそれじゃあ凪が寒いよ。」

「私はいいから!」

強気な私が珍しいのか。
まくし立てる私に気圧されたのか。
霞くんは私の手から手袋を受け取った。

「新しい凪の一面を知った気がする。」

「もう霞くんっ!」

「あはは、ちゃんとつけるよ。」

笑いながら、霞くんは私の手袋をつける。
でも、つけたのは左手だけで。
右手の手袋はつけず私に返そうとしていた。

「両方つけなきゃダメだよ!」

「凪が寒いのは嫌なんだ。」

「私は霞くんが寒い方が嫌だよ。」

「ならどっちも暖かければいいでしょ?」

「どういう……」

どういうこと?
そう聞こうと霞くんに尋ねようとすると。

霞くんは私の右手に手袋をはめて。
手袋をつけていない霞くんの右手が私の左手をぎゅっと握った。

「わっ!」

「これなら寒くないでしょ?」

照れたように笑う霞くんに思わずときめいてしまう。
そんな顔……反則だっ!

繋いだ手を霞くんは自分のコートの中にしまい込む。
はにかみながら行こうかと言う霞くんに。
私は顔を赤くしながら、こくりと頷いた。