「橘花ちゃん、あのね……」

「凪!冬野と付き合い始めたってどういうこと!?」

「……なんで、知ってるの?」

「学校中その噂で持ちきりだよ!

「あはは、流石霞くん人気者だなあ。」

のんきに笑う姿に拍子抜けしたのを覚えてる。

ねえ、凪。
水原はもういいの?
あんなに好きだったのに、いいの?
本当に雪加瀬にとられてもいいの?
今、幸せ?

聞きたい言葉はたくさんある。
でも、どれも口にできなかった。

笑う凪の努力を無駄にしたくなかった。
忘れようとしているモノにあえて触れるなんて。
そんなこと、私にはできない。

大好きだからこそ、言えないことだってある。

凪、私は凪の味方だよ。
たとえどんな理由で冬野と付き合ったとしても。
凪の選択が間違っていたとしても。
それでも、凪が誰より傷ついて頑張ったことを知っているから。
たとえ私のしていることが間違えだったとしても。
友達失格だったとしても、私はずっと味方でいるよ。

だからさ。……だから。
私には本当のこと、教えてよ。凪。

「橘花ちゃん?」

「えっ、なに?凪。」

「いや、次の英語やる気でないねって話だよ。」

「え、ああ。そうだね!」

「変な橘花ちゃん。」

ふふふと花が咲いたように笑う凪がかわいくて。
私は思わず抱きしめてしまった。

「わっ、橘花ちゃん!?」

「凪~、だいすきだぞ~。」

「いきなりどうしたの?」

「んー、最近かまってくれないから?」
「もうっ、橘花ちゃんったら。
 私だってだいすきだよ~!」

笑う姿は雪加瀬にだって負けないくらいかわいい。
凪はかわいいんだ。
みんなが知らないだけで、すっごくかわいい。

努力家で、謙虚で。
好きな人のことを何よりも優先して考えられる。
好きな人が笑うなら、何十年越しの片思いだって諦められる。
そんな、素敵で……。

「凪、私は凪のこと1番好きだからね。」

「橘花ちゃん?」

「忘れないでよね。」

「今日の橘花ちゃんは甘えただね~」

凪が泣かないから。私も泣かない。
凪が笑うから、私も笑う。

だって、凪が好きだから。