「ねえ、あの噂知ってる?」

「冬野くんのでしょ!?」

「やばくない?冬野くんに彼女できたって。」

「だれだれ!?!?」

「1組の堀川って人らしいよ。」

「誰それ……。」

「見たことあるけど平凡っていうか、ちょいブサ?」

「冬野くんに全然釣り合わないんだけど。」

「冬野くんって確か雪加瀬さんに振られたんだよね。」

「ランク落としすぎじゃない?」

「それね。」

「あっでも、冬野くんのこと下の名前で呼んでいいの堀川さんだけらしいよ。」

「なにそれ!」

「雪加瀬さんの時もおとぎ話みたいだと思ったけど。
 冬野くんたちのも結構だよね。」

「あーあ、いいな堀川さん。どうやって冬野くん落としたんだろ。」

この噂を聞き始めて1週間がとうに過ぎてる。
誰も彼も、飽きずにこの噂ばっかり。
冬野と凪が付き合い始めたという噂。
私も、噂で知ったからびっくりした。

凪は、私には話してくれると思ってたんだけど。
伝える前に噂で聞かれるって……。

隣でのんきに缶のココアを飲む凪。
当の本人は噂話に耳を傾けていなさそうで。
心ない言葉をたくさん聞いているはずなのに。
それでも笑う凪に、心が痛くなる。

水原のことでも傷ついてるはずなのに。

でもどうして、冬野と付き合い始めたんだろう。
ていうか、接点あったなんて知らなかった。