「……マリンスノー。」
「これを見たとき、凪と一緒にみたいと思ったんだ。」
じわじわ、心が温かくなる。
それと同時に、うみくんへの想いがとめどなくあふれ出す。
どうしよう……。
私、……私どうしようもなくうみくんが好きだ。
熱くなる胸を押さえながら、私たちは指定されたスクリーンへと足を進めた。
映画の内容は題名の通り。
マリンスノーを見に行く恋人同士の物語だった。
深海に降り積もる雪のようなプランクトン。
海雪とも言われるそのプランクトンたちは海の奥深くへ沈んでいく恋人たちの視界を埋め尽くしていた。
豪華客船が沈没し、乗客員全員が海に飲み込まれて死んでしまう話。
将来を誓い合った男女が、死にゆくときも一緒だと再び愛を確かめあい。
手を繋ぎながら、海の奥底へと沈んでいく。
その時、ふたりの視界を占領したのが。
はらはらと舞い落ちるマリンスノーだった。
まるで、ふたりの故郷の雪のように。
しんしんと降り積もる雪のように。
初めて愛を誓い合った日の雪のように。
ふたりの最期を見守るように降り積もる海雪は。
彼らが目を閉じるとともに、見えなくなり物語は幕を閉じた。
映画が終わると、あたりからが鼻をすする音が聞こえてきた。
私もそのひとりで。
切ない物語の結末に涙を流さずにはいられなかった。
「ううう……」
「凪、いい加減泣き止んだら?」
泣いて動けずにいる私の背中を撫でながら、そう言ううみくんは。
言葉とは裏腹に動く気配はなく、ハンカチで私の涙を拭ってくれていた。
「だって……あんまりにも切なくって。」
「僕も題名を見て買っただけだったから、あんな物語だなんて思わなかったよ。」


