「うみくん。」

「どうしたの、凪。」

「今日の英語の課題なんだけど、分からないところがひとつあって……」

「どこ?」

「問4の日本語訳のところなんだけど。」

「ああ、たしかにそこ難しかったかも。」

「1文が長くて訳がごちゃごちゃになっちゃって。」

「学校に着いたら教えるね。」

「うん、ありがとう。」

「凪。」

「ん?」

「ちゃんとマフラー巻いて。
 風邪引いたら大変だよ。」

「わっ。」

空気が冷たくなった12月の登校途中。
とれかけた私のマフラーをうみくんはそっとまき直してくれた。
その動作にドキドキしながらも、顔が赤いことがバレないようマフラーにもふっと顔を埋めた。

車道側を歩く、私より少し身長が高い、でも男の子にしては小さめの小柄な幼なじみ。
うみくんとは幼稚園の頃からの仲だ。
幼稚園が同じで、入園してから隣に住んでいることを知った。
元々うみくんとは性別が違うこともあって仲が良かったわけじゃないんだけど。
お母さん同士がすごく仲良くなって。
その影響で、今ではうみくんの家族と一緒に旅行に行くくらいの仲になった。
そして、いつからか。
家族も同然だと思って接していたうみくんのことを。
ひとりの男の子として意識するようになった。
気づいたら、好きになっていた。
この気持ちに気づいてから今まで、私は想いを明かすことなく大事に胸の中にしまっている。
だって。