「おはよう、凪。」

「おはよう、うみくん。」

年が明けて、1月になっても私たちは変わらない。
一緒に登下校をしていた。

相変わらずうみくんと雪加瀬さんはお付き合いをしていて。
付き合い始めははやし立てた学校のみんなも。
ふたりが付き合っていることがなじんできたのか。
今では見守る人しかいなくなった。

ふたりの姿を見るのは、今でも正直辛いけど。
冬野くんと話してからは。
少し心の余裕ができたみたいで。
ああやってひとりで泣き崩れることはなくなった。

「凪、今年の旅行だけど。」

「ああ、どこ行くんだっけ?」

「温泉がいいって、うちの親は言ってた。」

「温泉いいね、お母さんたちに伝えておくね。」

「うん、よろしく。」

水原家と堀川家は毎年一緒に旅行へ行っている。
去年は北海道で、一昨年はボーナスがたくさんだったからって海外だった。
その代わり一年に一回しか旅行はないけど。
私とうみくんにとってはその一回が何よりも楽しみだった。

雪加瀬さんは嫌じゃないだろうか。

私とうみくんの関係を知っているからとはいえ。
彼氏が他の女の子と旅行へ行くのは嫌だと思う。

旅行行きたいけど。
……私だけでも、やめておこうかな。

密かにそう、心で思い始めていたとき。

「うみ!」

学校近くの通学路。
電信柱に寄りかかっている雪加瀬さんを見つけた。