よし。強行突破だ。

私の中で、司令官が合図を出した。



背筋を精一杯伸ばして、踵を上げて。

形の良い唇に自分のモノを寄せると、意外と嫌がりもせず、それを受け入れた。



「もう諦めてください」

「酔ってるな?お前」


あーもう戻れねえ、と先輩がしゃがみこみ、頭を抱えた。

その姿を見て、何故か勝利を掴み取ったような気分になったのは。


今日が、決戦の日だからだ。


敗北、撤回。





それからは、早かった。

正直、私はこんな状況でもしっかりと酔っ払っていて、気がついた時には知らない部屋にいた。

たぶん、というか確実にそうなんだけど、先輩の部屋の玄関のドアを開いた瞬間。


これでもか、というキスが降ってきた。



ドラマみたい、なんて子供みたいな考えを持っていられたのは、ほんの一瞬だった。

苦しくて、いやらしくて、最高に幸せ。

初めて見た先輩の素肌を目に焼き付けようと、必死に目を開けていたら、きちんと気付かれ、また苦しいくらいのキスが落ちてきた。