高校入学早々、私は恋に落ちた。
相手は先生だ、しかも同性。
そして私は先生にアタックし続けてなんとか仲良くなることができた。
そんな私の高校生活は先生一色だったと思う。
周りからも、「ほんとうに先生のこと好きだねぇ」、と呆れられる始末であった。
しかし、そんな楽しい日々はあっという間に過ぎていって、今日はもう卒業式であった。
卒業式の終わった今、先生に手紙を渡すため、私は先生のいる教科準備室に向かっている。
(先生、いてよね…)

目的地の前にたどり着き、深呼吸をする。
胸の高鳴りが止まない。
もう、どうにでもなれ!と思ってドアに手をかける。

ドアを開けると先生が椅子に座って携帯を触りながら、コーヒーを飲んでいた。
やっぱりこの準備室は先生のプライベートルーム化している。
「せんせい…」
「あら、こんにちは」
先生はいつものように微笑んで言う。
「先生、これあげる」
私は昨夜徹夜して書いた手紙を渡す。
「えっ!?いいのっ??えっほんと!!?ふふっ、ありがとう〜」
こんな風に手紙をあげるのは何回目だろうか。
その度先生は笑顔ですごく嬉しそうに受け取ってくれた。最初はそれがすごく嬉しかったけれども、卒業が近づくたびにモヤモヤしていた。
「ねぇ、先生…?」
「なぁに?」
「そんな風に笑顔で受け取ってくれるのも、私が生徒だからでしょ…?」
先生の表情が一瞬曇った。
「今まで私が、どれだけ先生のこと好きって言っても嫌な顔せずにありがとうって言ってくれてたのも、私が生徒だったからでしょ…?」

ずっとモヤモヤしていた。
もし私が生徒じゃなくなったら、先生は私に笑顔を向けてくれるのか。
いくら仲良くなれたとはいえ、先生にとっては私なんてただの1人の生徒にすぎないと思う。
先生が生徒の言うことに笑顔で接してくれるのも仕事だからだ。
私が生徒じゃなくなったら、先生との繋がりはもう何も無くなる。そんなの…。
「せんせい…最後に1個だけお願い聞いてよ…抱きついていい?」
「そんな顔で言われたら、ダメなんて言えないわよ」