「…それで?大好きな彼氏と再会出来たの?」

親友の茅出彩葉(かやで いろは)は届いたばかりのスパゲッティーをフォークで巻きながら問いかけてくる。

「…なかった…」

「は?」

「いなかったの!約束の場所に…!!」

私はそう言うと氷だけになったココアをズズズッとすする。

「まだ1日でしょ?まだ会えないとは決まった訳じゃないって!」

彩葉が慰めてくれるものの、私の気持ちは一向に晴れない。

「うぅ…もしかしたら忘れてるのかも…」

「だから、まだ分かんないでしょ?ほら頼んだグラタン来たよ!取り敢えず食べよ、ね?」

浮かない顔の私にムリヤリスプーンを持たせ、「冷めないうちに」と急かす。

冷めるもなにも熱々で食べれないんですけど。

「そういえばなんでうちの高校、学食じゃなくてカフェなんだろ?」

私がグラタンを半分くらい食べ終わった時、唐突に話し出した。
「なにいきなり?それ昨日も聞いたよ…」

ため息混じりにそう言うと「言ったっけ?覚えてないわ」とあっけらかんと笑う。

彩葉、何回私に同じ話をする気だ。

「ていうか、茉莉いいの?」

「何が?」

カフェの話の次は一体何の話?首を傾げる私に「後ろ、先生呼んでる!」と肩を叩く。

「ちょ、痛いって…わぁ!」

文句を言いながら振り向いた私の目に、担任の先生の顔がドアップで映りこむ。

「悪い、佐久良。職員室に今すぐ来い。先行ってるから」

「は、はい!今行きます!!」

先生いたの全然気付かなかった…。

「ごめん彩葉、食器片付けといてー!」

慌ててカフェを飛び出す私に「りょうかーい」と明るく見送ってくれた。