う……。
薄々感じてたけど、やっぱり奈保くんか…。
きのう逃げるように帰っちゃったから、なんとなく気まずい。
どうやら気まずいと思ってるのは私だけではなく、部屋に入ってきた奈保くんは珍しく目を合わせてくれない。
「梓ちゃん、」
「な、奈保くん……なんか、ごめんね。わざわざ来てもらっちゃって」
「俺が来たかったから来たの」
でも奈保くん、きみジュケンセーだよね。大丈夫なの?
「それに、うつしちゃったの俺でしょ。無理矢理あんなことしちゃったし」
奈保くん、無理矢理って自覚あったんだね。でも、それを香乃の前で言わないで。ニヤニヤしてるよ、既に。
「梓~、“あんなこと”ってなに~?」
香乃、仮にもお見舞いに来てくれてるんだよね?なのに明らかに野次馬の顔しないで。泣きたくなる。
「俺と梓ちゃんの秘密なの。香乃には教えない」