持ってきた保冷バッグごと、香乃ママに手渡す。
「あら、ありがとう。おいしくいただくわね」
「あ、あんまりおいしくないかもしれないですけど……あっ、香乃には好評でした」
「そう?なら心配しなくても大丈夫。香乃の舌って肥えてるから」
「あはは、確かに」
そんな他愛もない話をしていたら、階段の上から足音が聞こえた。
「あら、奈保、起きてたの?」
「えっと…はい」
「梓ちゃん帰るならお見送りさせなきゃね。な…」
「あの、大丈夫です!奈保くん、風邪ひいてるし…。私、本当にそろそろ帰りますね!お邪魔しました!」
「今日はありがとう。気をつけてね」
笑顔の香乃ママに見送られて、私は奈保くんから逃げるように帰った。