時すでに遅し、とはこのことで。
「梓ちゃん、おいしそう」
「はい?」
「……食べたい、」
「…………奈保くん」
爆弾発言にむせそうになったけど、思いのほか冷静でもあった。
次の瞬間、私は奈保くんにこちょこちょ攻撃を仕掛け、奈保くんの腕から脱出することに成功した。
「あ、梓ちゃん…」
「私、やっぱり帰る」
「え?」
「奈保くん元気そうだし。心配して損した」
私は心配でたまらなかったのに、いざ来てみれば、奈保くんはすぐ元気になるし(それはいいけど)、いつもみたいにふざけてからかってくるんだもん。
一緒にいるときは、大体何かされるし。
自分がそのために呼ばれるみたいな感覚になって、なんか嫌だ。



