「えーっと。じゃあ、これは香乃のとこ持ってくね」

「香乃ちゃんによろしく……って、さすがに制服のままでは行かないでしょ?」

「そりゃもちろん。私を何だと思ってんの」

「奇人変人」

「仮にもあなたの娘なのに」


さっきから私、ディスられてる気しかしないんだけど。
気のせいかな?うん、気のせいじゃないよね?


「…まーいいや。じゃあ着替えたら出かけてくるからね」

「あいよ」


靴下は洗面所にある洗濯カゴに投げ込んで、それから自分の部屋に行って大急ぎで制服を脱ぐ。


……家ではいつもジャージなんだけどなぁ…。
さすがに人の家でジャージはマズいか。いくら香乃の家でも。

それに、奈保くんもいるかもしれないし。
あの奈保くんに、そんなもの見せるわけにはいかない。気を遣わないと。香乃相手ならあんまり気にしない…って、それもダメか。

うーん…。


そして、悩むこと数分。

結局。
とりあえずジャージは免れたものの、私が選んだのはパーカーにジーパンという、極めてシンプル…という言い方は良すぎるかもしれないけど、そんな服装。

…あ、あれだ。無難って言うのがピッタリ。


でも、香乃の家まで自転車で行くからなぁ。
やっぱりズボンの方が色々勝手が良い。