弟くんの逆転



「…梓ちゃんの噓つき」


奈保くんは拗ねたように言う。


「噓つきって……」

「梓ちゃん、約束破るんでしょ?噓つきじゃん」

「破るなんて、そんなつもりじゃ…」

「結果的に破ってるじゃん。ダメなんでしょ?梓ちゃんは噓つきだ。あのときちゃんと、やるって言ってたのに」


だんだん怒っていくような奈保くんに、焦りが募る。

だけど、落ち着け私。奈保くんのことだもん、きっと演技だ。ここで私が「じゃあ…」なんて言ったら、ケロッと笑うに違いない。


「…もういいよ、噓つきで」

「うん、俺も、梓ちゃんが噓つきでもいいよ」

「へ?」

「だって、一回は承諾してたもん、梓ちゃん。こっちには免罪符があるんだよ」


…めんざいふってなんだっけ。
あ、「これを買えば罪が許されますよ」的なものだ。

つまり奈保くんが言ってるのは、「私が一回承諾したから、俺が何かやっても許されるよね」みたいなこと……って、ダメじゃん。危ないよ、私。