弟くんの逆転



「……っ!」


ようやく半分くらい出られた頃、また私は引きずり込まれた。

…奈保くん、ほんとは起きてるんじゃないの。
そう思ったけど、隣からは心地よさそうな寝息が聞こえてくる。

そんな奈保くんにほんわかしてると、さらに体が引きずり込まれる。


…ほぼほぼ、元の状態に戻ってしまった。

そこまではまだよかったのに、奈保くんは眠ったまま、私を抱きしめる。…抱き枕にでもされてる気がする。っていうか抱き枕になってる。

しかも、寝てるくせに、奈保くんの力が強すぎる。


「あずさ…ちゃん」

「っ、」


…抱きしめたまま、寝言でそんなこと言うなんて、反則だ。

相手は眠ってる病人なのに、ドキドキが止まらない。顔だって、奈保くんの熱が移ったのかと思うくらいは、真っ赤になってるはずだ。