「…こんな近くにいたら、うつっちゃうよ」


え、なんだ、そんな心配?それならご無用だ。


「大丈夫だよ、私、風邪あんまりひかないもん」


にこやかに奈保くんに言ってみせる。


自慢だけど、私はあまり風邪をひかない。ひいたとしても、熱はほとんど出ない。前に、風邪ひいた弟に付きっきりで看病してたけど、そのときもへっちゃらだった。

…まぁ、「バカは風邪ひいたことに気がつかない」って言うけど、そういうことじゃないよね、うん。そういうことじゃないはず。


なんて、くだらなすぎる脳内プチ回想をしていると、奈保くんが口を開いた。


「だから、そうじゃなくてさ」


ゆっくりと上半身を起こしている奈保くんを見つめていると、突然腕を引っ張られる。


「……移るようなこと、したくなるでしょ」