「あーあ、来ちゃったんだ、梓ちゃん」
「え…あ…、…ダメ、だった?」
まるで、来てほしくなかったみたいな。
よく考えたら当然だよね。本人に聞いてなかったもん。ただ香乃に許可取っただけ。香乃ママに「きっと喜ぶ」って言われただけ。確証なんてないくせに、期待していた。
…でもどうしよう、泣きそう。
「…うんほんと。ダメじゃん。熱で理性失いかけてる俺の前で、泣きそうになっちゃうなんて」
「ダメ…、りせい…?」
「俺にとっては、梓ちゃんが来てくれたの、嬉しいけど、」
熱があって少し苦しそうにする奈保くんが、途切れ途切れに言う。
「嬉しい」
奈保くんのそんな言葉で、私の方が元気もらってる。…って、私が元気になってどうする。
そう思いながらも、「けど、」の先に続くであろう否定的な言葉が、奈保くんの口から出るのが怖い。



