くそぅ、香乃め。言っておいてくれててもよかったのに。恨み言を香乃に言ってやりたいところだけど、香乃は部活中だ。まだ帰ってきてない。
「2階上がってすぐ右の部屋だから、奈保の部屋。行ってやって。それと気をつけてね」
「はぁ…?」
いったい何を気をつけるというのか。行けばわかるかな。
コンコン
「なにー、母さんー?」
「ううん、違うよ、梓。お見舞いに来たの。入っていいかな?」
「梓ちゃん、今の俺やばい」
「え、大丈夫!?は、入るね!?」
奈保くんの弱ったような声で聞き捨てならない言葉が聞こえてきたから、焦った私が慌ててドアを開ける。
…あ、奈保くんの部屋、洋室だ。
そんなことを思えたのも束の間、ハッとなって奈保くんがいるであろうベッドに近づく。



