いつも通り、自転車で10分。
香乃の家、今日は奈保くんのお見舞いにやって来た。

お母さんとはモヤモヤしたままだけど、具合が悪い奈保くんの前で暗い顔してたらダメだ。ちゃんと切り替えなきゃ。


ピンポーン


チャイムを押して少し待っていると、香乃ママが出てきた。
香乃の家には頻繫に来ているけど、香乃ママに会うのは久しぶり。働いているらしい。


「あら、梓ちゃん。久しぶりね。香乃と約束?」

「えっと…お久しぶりです。あ、香乃とも約束してるんですけど、奈保くんが具合悪いって聞いて、それで……あの、迷惑でしたか?」

「そんなわけないじゃない。大丈夫、きっと喜ぶわ。私はもう嬉しい」

「あ、ありがとうございます……?」