「どっか行くの?」

「うん」

「服には気をつけなよ」

「言われなくてもそのつもり」


さっきの恥ずかしさと、もともと考えてたことをわざわざ言われてしまったことに対する、ちょっとのイライラが混ざっている。だから少し、投げやりな言い方になってしまって、感じ悪く聞こえたかもしれない。

だけど、後悔したときにはもう遅くて、お母さんを見ると冷たいような怒った顔をしていた。


「あ…お母さんごめ……」

「早く着替えてきたら?」


お母さんは怒ると、「ごめんなさい」も言わせてくれない。それがすごく、怖い。

何でもかんでもすぐに謝って済まそうとする人にならないようにするため、ってお母さんは言っていた。あと、相手を最初から怒らせないようにするため、とも。

だからいつもは気を付けてるのに、今日は余裕がなかったのか、怒らせてしまった。
既に気まずい空気が流れているから、弟が帰ってきたらいい迷惑だろう。ごめん。