「…奈保くん、きっとモテるよね」
「え、うん、そうじゃない?ってかどういう返し方なの、それ」
聞いてくれ香乃さんや。
私はこの短い時間で、頭をフル回転させて考えたのだよ。なんとしても、この『奈保くんが入学してきたときの不安』を解消するために。
「高校入ったら女子は学校でメイクとかできるから、可愛い女の子がいっぱいだろうね、奈保くんの学年にも。そしたら私に構ってる暇なくない?ちゃんと考えたら、きっと大丈夫だよ」
たった数秒間で頭をフル回転させたら、こんな素敵な結論にたどり着いたよ。聞いたか香乃。
ちょっぴりドヤ顔で言ったのに、香乃は乾いた笑みを浮かべてひとこと。
「梓、甘い」
そのひとことで、私は真っ白な灰になった気がした。