「いや、梓、絶対勘違いしてると思うけど、あたしより好かれてるよ?ぶっちゃけ」

「…よくわかんない」


それはさすがにないと思うけど、もし仮に、香乃よりも好かれてるんだとしたら、奈保くんは嫌がらないと思うんだけどな。

…あ、そもそも、香乃も嫌がられてるとか…?
やっぱり、よくわからないなぁ。奈保くんは。


「…まぁ、いずれ嫌ってくらいわかる日が来るよ、きっと」

「そうなの?」


それならいっか。その日を気長に待とう。

会おうと思えばいつでも会えるような距離にいるんだし。
気になったら、きっといつでも聞けるし。


「じゃあ、まぁ一旦帰るね。準備できたらすぐ行く」

「はいはい。待ってるよ」


いつも通り笑顔の香乃と別れて、私はダッシュで急いで家に帰る。

…きっと香乃は、のんびりと歩きながら帰ってるんだろうな。羨ましい。
…なーんて思ってても仕方ないから、とにかく急いで香乃の家に行くことだけ考えよう。