「絶対たべる」

「どうぞどうぞ。そのために作ったんだし」

「奈保(なお)も喜ぶと思うな。梓の作るお菓子」

「え、ほんと?」


奈保くんというのは、香乃の弟くんだ。
私たちの二つ下で、今年、中学生3年生。受験生だ。

昔は香乃にそっくりで双子みたいだったけど、今ではすっかりイケメンに成長してしまった。さぞかしモテるんだろうなぁ。なんだか感慨深い。


「奈保は昔っから梓に懐いてるからね~。絶対喜ぶよ」

「いや~、可愛い弟くんでいいな。うちの弟くんは反抗期真っ只中だからなぁ。それも可愛いんだけど。交換してくんない?」

「…多分、奈保は嫌がると思う…」

「そっか~。さすがにダメかー」


仲良くなると図々しくなってしまうのは、私の悪い癖だ。既に香乃相手には図々しいけど。

でもやっぱり、ちょっと落ち込む。
どうやら、私が思ってたより奈保くんには好かれてないらしい。