「え、っと…、奈保くん?」

「ん?」


この状況を楽しんでいるのか、奈保くんは不敵な笑みを浮かべながら、「何かあったの?」とでもいうように、聞き返してくる。

…絶対、確信犯だ。
奈保くん、急にどうしちゃったの。


「近くない?」


さすがに、言葉だけなら大丈夫だったけど、この距離には耐えられない。


「そうかもね。ドキドキした?」

「しちゃうから、離れて…」

「やだ」


そんな、駄々っ子みたいなセリフで言われても、ダメなものはダメだ。

無駄にイケメンに育った奈保くんを至近距離で見てれば、動悸は一層速くなるばかりで。


「梓ちゃん、真っ赤だね」

「誰のせいだと…!」

「俺のせいなの?」


なぜか、嬉しそうに聞いてくる奈保くん。


「そうだよ、奈保くんのせいだもん…!」