とりあえず、さっきから奈保くんがちょっとおかしくなってるってことはわかった。大丈夫なのかな。
「奈保くん、大丈夫?」
「うーん、全然だいじょばないね。梓ちゃんがチューしてくれたら治るかも」
「だから、ふざけないの。しかも、『かも』って…」
どうやら奈保くんは、チャラ男への道を、どんどん進んで行ってるみたい。
チュー…って。こっちは真面目に聞いてるのに、やめてほしい。
ましてや、男性経験ゼロの私がそんなこと言われてあんな反応できたのは、奈保くんだからだ。昔の奈保くんを知らないで聞いたら、どんなに取り乱しちゃうことか。
「梓ちゃん、ちょっとはドキドキした?」
「んー、ヒヤッとした」
「それじゃあダメだね」
…どうしよう、また「なんで?」が増えていく。
それじゃあダメ…って、奈保くんが私をヒヤッとさせたんじゃんか。
そう言いたいけど、言えなくて。
奈保くんが急に、顔を近づけてきたから。



