変わらぬ笑顔のまま奈保くんがそう言っても、私の頭は「?」で埋め尽くされていくばかりで。

香乃に助けを求めようと思ったけど、香乃は私が持ってきたお菓子を食べながら、ゲーム機を取り出して、すぐにそれをやり始めた。まさかの放置プレイ。

ひとり頭を抱えていると、奈保くんが隣で、チョコチップクッキーをつまんで、「美味いな~」なんて言っている。うん、それはありがとうなんだけどね。


「…梓ちゃんも、ほら。あーん」

「えっ…!?ふぉ…」


唸っていると、横から奈保くんの腕が伸びてきて、中途半端に開いている私の口に、クッキーをつっこんだ。

…自分で作っておいてなんだけど、やっぱり美味しい。
サクサクという音が心地よくて、自然に頬が緩んでいくのがわかる。


「…クッキーになりたい」

「え、奈保くん急にどうしたの」

「梓ちゃんをそんな幸せそうにできる、クッキーになりたい」


…うーん、クッキーうんぬんはよくわかんないけど。


「私、奈保くんといるの、楽しいよ?」

「え?」

「充分幸せもらってるよ?それに、奈保くんがクッキーになっちゃったら、こんな風にお喋りできないもん。今のままがいいな」