「それはどうも」
お礼を言うことでもないけれど、返答に困ったからそう言って教室を出ようとカバンを持つ。
「……じゃあ行くか。
春坂さんも電車だよな?」
「そうだけど、菅原は?」
「俺も電車」
「そうなの?」
なんとなく自転車通学のイメージがあったから驚いた。
「春坂さんって北中だったよな、中学の時」
「えっ……?」
なんで知っているのか。
思わず菅原のほうを向けば、彼は目を細めて微笑んでいた。
「なんで知って……」
「俺、南中だったから。春坂さんのこと知ってたんだよな」
「う、嘘……」
菅原が南中だったなんて驚きだ。
じゃあもしかして家も近い?
北中と南中は近くにあるし、最寄り駅も同じか一駅ずれるくらいだ。
それに今、私のこと知ってたって……。
「どうして知ってたの?」
「さあ?そんな容姿していたら目立って当然だろ?」
いやいや、それを言うなら菅原のほうだ。
こんなかっこいい人、一度見たら覚えているはず。
それに菅原がしらばっくれているあたり、怪しいでしかない。