素直に怖いと思った。
そんなこと、誰でもできることじゃない。
「でも、春坂さんにはもういいかなって」
「何が」
「ニセモノの自分、取り繕うのは」
こういう時、どう反応をすればいいのかわからない。
喜ぶことでもないし……かといって、嫌だと思うことでもない気がする。
「……そう」
「驚かないんだ」
「別に、どっちでもいい」
私がどうこう言うことでもないだろう。
「……本当に春坂さんっておもしろいよな」
「おもしろい……?」
「やっぱり俺のお気に入りだけあって、おもしろい」
おもしろいだなんて言われたことがないから、複雑な気持ちだ。
普通は野村のような人をおもしろいと言うはずなのに。