「春坂さん、まだ視聴覚室に行かない?」
私だけでなく菅原も、誰もいない教室に残っていて声をかけられた。
菅原は立ち上がっていて、どうやら今から視聴覚室に向かう様子だった。
「先に行ってて大丈夫だから」
「冷たいこと言う。せっかくだし一緒に行こう?」
菅原は眉を下げ、困ったように笑う。
常に笑っているイメージのある菅原の表情筋は、いったいどうなっているのだ。
私に教えてほしいぐらい。
どうしたらそんな風に笑えるのかって。
もちろん恥ずかしくて聞けるわけないのだけれど。
「春坂さんがまだ行かないなら、俺も待っとこう」
菅原はそう言って、また自分の席に座ってしまう。
できれば先に行ってほしかったのに。
だって菅原と歩けば、さらに目立ってしまう。
視線が痛いと結構居心地が悪いのだから。



