「ごめんね、あれ嘘だから」
「嘘?」
つまり、私は騙されたってことで合ってる?
どうしてそんな嘘をついたのか、わからなくて次の言葉を待つ。
「あの先輩さ、悪い意味で有名なの、知らない?」
「悪い意味?」
「強引で手を出すのが早いって噂」
強引なのはなんとなくわかったけれど……手を出すってどういうこと?
もしかして、暴力のことなのかな。
そう考えたら、なんだかゾワっとした。
そんな人に私は目をつけられたのだ。
もし家に行っていたら、暴力を振るわれていたかもしれないってことでしょ?
「だからきてみたら、やっぱり先輩、無理矢理だったから……でも余計なお世話だったらごめんね」
菅原は眉を下げ、申し訳なさそうな顔をしたから慌てて首を横に振る。
「いや、そんなことはないから……ありがとう」
ちょうど困っていたし。
じゃあ菅原は私を助けるために、嘘までついてくれたってことだ。