腹黒王子のいいなり。



だけど私は、“王子さま”である完璧な雅を好きになったわけじゃない。


本当は意地悪で、だけど優しい。

私のことを気づいてくれて、弱い私も受け入れてくれた。


泣いてしまった時は、泣き止むまで抱きしめてくれたり、慰めてくれたり。

温かい言葉をかけてくれて、安心させてくれる。


そんな雅も含めて、いつのまにか好きになっていた。


「あれは、わざとだな」

ぼそっと、野村が私に向かって小さく呟いた。


「わざと?」
「見せつけてるだけだから、春坂さんは気にしないでいいからな……って、気にしないか」


気にしないでいいって、雅たちのこと?

そんなの無理だ。
気になるに決まっている。


今だって雅を見つめる、前の席の女子。
雅の瞳にはその子だけがドアップに映っているのかもしれない。

それも、嫌だった。


変なの、私。
なんてことを考えているんだろうって、思う。