「それとも何?俺との約束、忘れた?」
意地悪そうな笑みに変わる。
これは危険な合図だった。
そのタイミングで電車が駅に止まり、私は慌てて立ち上がる。
急いで電車から降りて改札に向かう私の腕を、雅が掴んだ。
「逃げようとするな」
「に、逃げてない……」
「嘘つきはよくないな?」
「ご、ごめん……」
雅は優しい人だけど、意地悪な人でもある。
その事実を、確かに最近私は忘れていたのかもしれない。
私は雅の言う通りにしなければならないのだ。
雅は黙り込む私を見て、満足そうに笑うと、今度は手を握ってきた。
そういえば、最初の頃は周りの目を気にして、雅に手を離してって言っていたな。
だけど今は、そんなことを一切思わないから不思議だ。
さらには雅の手を握り返している自分がいる。
その心境の変化が、不思議なくらいで。



