それだけではない。
「……疲れた」
「大丈夫なの?」
帰りの電車で、隣同士に座る私たち。
唯一ふたりが行動を共にできる登下校でも、ここ最近ずっと雅は疲れたような顔をしていた。
行きは気分が重くて、帰りは疲れ切っていて……らしい。
「大丈夫なわけねぇだろ、まじ面倒くせぇんだよあの席」
理由はどうやらあの席にあったようだった。
雅も女子に囲まれ、ニコニコするのはしんどいらしかった。
「だから肩貸せ」
「は?」
「寝る」
雅はそれだけ言って、私の肩に頭を乗せて目を閉じてしまう。
せっかくふたりでいれる時間なのに。
寝てしまうだなんて。
少しして小さな寝息が聞こえてきたから、寝てしまったのだということがわかった。
「……雅」
ぽろっと口からこぼれた雅の名前。
寂しい、ここ最近ずっとこんな感じで。
雅が遠く感じて、嫌だった。