「女子も諦め悪いよなぁ。
春坂さんと席離れた瞬間、雅に近づくなんて」


その女子の変わりように、さすがの野村も気づいたらしく、休み時間にふとそう言った。



私だって思う、けれど。
どうすることもできない。

“王子さま”である雅は、誰に対しても平等に接する人。



「夕美ちゃんは、嫌じゃないの?」


不安そうな顔で前の席のひなこが質問してきたから、平然なフリをして答えた。

「……別に、平気」
「そっか、ならよかった」
「春坂さんは嫉妬しないよなぁ、かっこいいな」


本当は、違う。
かっこいいなんて、私には不相応。


だって今の私の気分は重く、そして苦しい。
雅が他の女子に囲まれてて、笑っているのを見ると、嫌な気持ちが胸いっぱいに広がってしまうのだ。