「私はもう限界で……」
「だから?」

「えっ……」
「お前がどうであれ、俺には関係ない」


私を優しく抱きしめるくせに、性格は全然優しくなかった。

むしろ私に対して意地悪をしてくる。
思わずぎゅっと、抱きつく力を強めた。


「ほら、そうやって逃れようとするな」
「してない……」
「夕美」

「……っ、ずるい」


こういう時だけ、名前で呼んで。
優しく声をかけるだなんてずるすぎる。

目的はただひとつなのに。



私は抱きつく力を緩め、ゆっくりと顔を上げる。
雅もこちらを向いていて、視線が絡み合うと満足そうに笑った。


そしてまた、私にキスを落とす。
何度もキスをされるけれど、嫌だなんて思わない。

それでもやっぱり恥ずかしくて、ドキドキしていたら、突然体が傾いて。

背中には柔らかいクッションのような感覚がした。


キスが止まったから目を開けると、視界には白い天井と私に覆いかぶさる雅の姿があって。

どうやらベッドの上で仰向けになっているらしかった。


「み、雅?」
「こうしたほうが、お前も体勢楽だろ?」

「そ、そうなの……?」
「うん、そう。だから力抜けばいい」


雅が私の頭を撫でるから、信じて体の力を抜いた。



「じゃあ、目閉じて」
「……っ」

すると今度は、優しい声音で誘導される。
もちろん私は全部、雅に従うのみ。


だから私は、そっと目を閉じた。