「す、菅原……」
「名前」
「……み、雅……」
まだ慣れない、名前で呼べだなんて。
それに、私だけ名前で呼ぶのは不服だ。
菅原は私のことを“お前”としか呼んでくれない。
みんなの前でだけ“春坂さん”だ。
「……ずるい」
「は?」
そう考えたら思わずぽろっと本音が口からこぼれてしまう。
「私だけ名前で呼んで、菅原は“お前”呼びだから……ずるい」
あまり気にしたことなかったから、今までなんとも思っていなかったけれど。
考えてみればおかしい。
さっきお母さんの前では名前で呼んでくれたのは確かだけど……。
「そんなすねるなよ。名前で呼んでほしいんだ?」
「うん、平等に」
「平等ってなんだよ」
菅原が笑う。
優しい笑みだった。