「ほら、早く」
“目を閉じろ”だなんて、“キスする”って言われてるのと同じだ。
菅原は余裕そうな表情。
私は逆に顔が熱くなって、手で仰ぎたくなる。
冷たい風に当たりたい気分だ。
その気持ちを抑え、ぎゅっと目を閉じる。
今、極限にドキドキしていて、心臓の音がうるさい。
じっと待っていると、菅原がふっと小さく笑った。
そして、ゆっくりと唇を重ねられる。
優しい重ね方に、体の力が少しばかり抜けた気がした。
ほんの数秒の時間が、とても長く感じられて。
菅原のシャツをぎゅっと握るようにして掴む。
多分電車の中でも掴んでいたからきっとシワだらけだろう。
罪悪感に駆られながらも、どこかにしがみついていないと、この恥ずかしさに耐えられないような気がした。