ひとつひとつの駅に止まるたび、人は減るどころか増えていくばかりで。
いつもなら私の周りだけなぜか余裕があったのだけれど、今日はそんな余裕すらないほど人が多くて、後ろの人に押される。
そのため自然と体が前重心になり、菅原と密着状態になった。
掴んでいいと言ってくれたから、シャツを掴む手は離さず、菅原に身をまかせる。
菅原からはふわりと柔軟剤のいい香りがした。
あ、好きだなこの匂い。
「……お前、これは平気なんだ」
ふと菅原の声が聞こえ、顔を上げれば、結構顔の距離も近くて驚いた。
「これ?」
これは平気って、どういうこと?
気になって聞き返すけれど、菅原は呆れるだけ。
「お前の反応って、おもしろい時とおもしろくない時があるよな」
「は?」
意味がわからない。
普通に考えて、今の言葉はひどいような気がした。