「サラちゃん、しっかりしろよ」

男子生徒の1人が私達に駆け寄り、教室の出入り口のドアを塞ぐように立つ。

彼は赤い顔で、瞳を潤ませていて今にも泣きそうだった。

ぼんやりしていたからか、彼の名前がすぐには浮かんでこない。

彼は、そうだ、三井くんの親友の柏木くんだ。

クラスメイトの名前がすぐにでてこないくらいに、私は夢か現実かわからないような状態だった。

「どいて、柏木くん、いかなきゃ」

「サラちゃん、落ちつけよ。三井が今日の卒業式に来られるわけなんてないだろっ」

少し興奮気味に声を荒げる柏木くんをぼんやりと見つめ返す。

「しっかりしてくれよ。あいつは、三井は今、病院の集中治療室にいるんだから」