塞ぎ込んでいたある日。
『ただいまー。葵、おはよう』
朝帰りでちょっとやつれたパパの後ろには、見知らぬおじさんと同い年くらいの男の子が立っていた。
『パパのお友達の本郷さんと、息子の樹くんだ』
『こんにちは、葵ちゃん。
大きくなったね。今何歳?』
目線を合わせるようにしゃがんで、話しかけてくるおじさん。
私は、右手をパーにして見せた。
『おっ5歳か!じゃあうちの息子と同い年だな。ほら樹、ご挨拶して』
おじさんにうながされるようにして、男の子は口を開き
『俺、樹。お前は?』
とぶっきらぼうに言った。
『・・・葵』
これで、会話終了。
この会話が、私と樹くんとの初めての出会いだった。