私の思い当たる節とは・・・
・・・ちょうど今から1週間前、3月末のこと。
その日、中学の友達とお昼を食べに行く約束をしていた私は、待ち合わせの時間に間に合わせるため、準備に追われていた。
「ねえ樹くん、どっちがいいと思う・・・?」
右手には春らしいクリーム色のワンピース、左手にはカジュアルな大きめのパーカーに黒スキニー。
優柔不断な私はなかなか着る服を決められなくて、ベットで横になりながら漫画を読んでいる樹くんにそう尋ねた。
基本用事がない日はいつも、私が樹くんの家におじゃましたり、樹くんが私の家に来たりして、一緒に過ごす
という週間は子供の頃から変わっていない。
「・・・パーカー以外ありえない」
人目見るなり、断言してしまう樹くんは割と即決タイプの人間だ。
「わかったっ!七瀬葵、パーカーにしますっ」
再び漫画に目を落とした樹くんにピッと敬礼する。
「敬礼するときは右手。まったく、親が警察なのにそんなこともわかんないなんて」
何やらぶつぶつ言っている樹くんに背を向けて、パーカーとスキニーを持って部屋を出ようとすると。
「どこいくの?」
漫画をとじた樹くんがこちらを向いて、パシっと私の左手を掴んだ。
「ど、どこって、部屋の外だよ?着替えようって思って・・・」
樹くんに掴まれた左手に意識がいって、音が聞こえそうなくらい心臓がドキドキしているけど、きっと樹くんは気づいていない。
「着替えなら、ここですればいいじゃん。誰もいないんだし」
なんていうから重症だ。
最近の私の悩み。
樹くんが私を、全然女の子として意識してくれないこと。
こっちはいつもドキドキさせられっぱなしで、大変だというのに・・・。
「い、樹くんがいるもん」
「ガキの頃は風呂も一緒に入った仲なのに?」
「む、昔と今じゃ全然ちがうっ」
「何を今さら。なんなら俺が着替えさせてやろうか?ほら、葵ちゃんおててばんざーい」
ふ、ふざけてる!
昔から樹くんは、私をからかって遊ぶのが大好きなのだ。
小学校2年生の頃なんて、
よく転ぶ私に「あ、そこ一昨日葵がずっこけたとこだ」とか、「こないだあの段差につまずいてランドセルの中身ぶちまけてたよな」とか、歩きながら毎回笑われていた。
なんなら、「見ろよ」とドヤ顔の樹くんに手渡されたノートには【葵ずっこけマップ】と書かれていたこともある。
私が転んだところをわざわざ書き留めて、記録しているらしい。
私が見せてもらった時はちょうど、ずっこけ150回目記念の日だったみたいで・・・。
祝150回と書かれた折り紙のメダルまでもらった記憶がある。
ほんとうに悪趣味なんだ、樹くんは。
「なっ・・・!それくらい自分で着替えられるからっ」
いまだ握られたままの左手をのがれた私は逃げるように部屋の外にでて、ガチャっとドアをしめた。
あぁ、心臓にわるいっ!
・・・ちょうど今から1週間前、3月末のこと。
その日、中学の友達とお昼を食べに行く約束をしていた私は、待ち合わせの時間に間に合わせるため、準備に追われていた。
「ねえ樹くん、どっちがいいと思う・・・?」
右手には春らしいクリーム色のワンピース、左手にはカジュアルな大きめのパーカーに黒スキニー。
優柔不断な私はなかなか着る服を決められなくて、ベットで横になりながら漫画を読んでいる樹くんにそう尋ねた。
基本用事がない日はいつも、私が樹くんの家におじゃましたり、樹くんが私の家に来たりして、一緒に過ごす
という週間は子供の頃から変わっていない。
「・・・パーカー以外ありえない」
人目見るなり、断言してしまう樹くんは割と即決タイプの人間だ。
「わかったっ!七瀬葵、パーカーにしますっ」
再び漫画に目を落とした樹くんにピッと敬礼する。
「敬礼するときは右手。まったく、親が警察なのにそんなこともわかんないなんて」
何やらぶつぶつ言っている樹くんに背を向けて、パーカーとスキニーを持って部屋を出ようとすると。
「どこいくの?」
漫画をとじた樹くんがこちらを向いて、パシっと私の左手を掴んだ。
「ど、どこって、部屋の外だよ?着替えようって思って・・・」
樹くんに掴まれた左手に意識がいって、音が聞こえそうなくらい心臓がドキドキしているけど、きっと樹くんは気づいていない。
「着替えなら、ここですればいいじゃん。誰もいないんだし」
なんていうから重症だ。
最近の私の悩み。
樹くんが私を、全然女の子として意識してくれないこと。
こっちはいつもドキドキさせられっぱなしで、大変だというのに・・・。
「い、樹くんがいるもん」
「ガキの頃は風呂も一緒に入った仲なのに?」
「む、昔と今じゃ全然ちがうっ」
「何を今さら。なんなら俺が着替えさせてやろうか?ほら、葵ちゃんおててばんざーい」
ふ、ふざけてる!
昔から樹くんは、私をからかって遊ぶのが大好きなのだ。
小学校2年生の頃なんて、
よく転ぶ私に「あ、そこ一昨日葵がずっこけたとこだ」とか、「こないだあの段差につまずいてランドセルの中身ぶちまけてたよな」とか、歩きながら毎回笑われていた。
なんなら、「見ろよ」とドヤ顔の樹くんに手渡されたノートには【葵ずっこけマップ】と書かれていたこともある。
私が転んだところをわざわざ書き留めて、記録しているらしい。
私が見せてもらった時はちょうど、ずっこけ150回目記念の日だったみたいで・・・。
祝150回と書かれた折り紙のメダルまでもらった記憶がある。
ほんとうに悪趣味なんだ、樹くんは。
「なっ・・・!それくらい自分で着替えられるからっ」
いまだ握られたままの左手をのがれた私は逃げるように部屋の外にでて、ガチャっとドアをしめた。
あぁ、心臓にわるいっ!