15話




 「わぁー……綺麗ですね。これは貝殻をイメージしてるんですか?」


 リビングでノートパソコンを開き、ネックレスのデザインを描いていると、黒葉はそれを覗き見て感嘆の声をあげた。


 「あぁ。次のお客さんの要望なんだ。海が好きな人にプレゼントするからと、貝殻がモチーフのデザインにして欲しいんだそうだ。」
 「すごく綺麗ですね……こうやって、いろんな貝殻を集めていたのは、そのためだったんですねー。」
 「まぁ、雑貨屋で買ってみたけど、ネットの方がいろいろ見られてよかったけど。……感触は、実際に触らないとわからないからな。」
 「そんな所までこだわっているなんて、葵音さんさすがですね。」
 「褒めても何も出ないからな。」


 葵音は、苦笑しながらも黒葉の褒め言葉が内心では嬉しかった。 

 細かな所に気を配っても、買ったお客さんがどんな風に思うか、気づいてくれるかはわからない。気づいてくれたければ、やる必要はないとは思っていないし、所詮は自己満足のためなのかもしれない。
 けれど、こだわったところに共感してくれて、喜んでもらえた時は、とても嬉しいものなのだ。
 自分のデザインを選んで買ってくれる人が、少しでも喜んでくれたら嬉しい。
 ただ、それだけのために、こだわりを持ってデザインし作り上げていた。

 だからこそ、作っている時に褒めてもらえるのは嬉しかった。
 一人で作業している時はそんな事はなかったし、自信がつく。


 「貝殻に触ってみてもいいですか?」
 「あぁ………。貝殻珍しいか?」
 「そうですね。私の住んでいた所は山ばかりだったので。海はほとんど見たことがありません。ここに来る途中に電車のなかから見ただけです。」
 「おまえが住んでいた所は、そういう所なんだな。」
 「………はい。」


 黒葉が初めて故郷の事を話してくれた。
 話をしてくれた事が嬉しかった。けれど、同時に自分は彼女の事を本当に何も知らないのだと気づいた。


 「じゃあ、今度海に行ってみるか。」


 そんな言葉を掛けたのは、彼女の共に暮らし初めて2ヶ月が過ぎた頃だった。