34話





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 夢を見ていた。
 ずっとずっと葵音が事故にあう夢だった。
 黒葉がどんなに守ろうとしても、彼が大怪我をして倒れてしまうのだ。


 守りたいのに守れなかった。
 そう泣き崩れては、葵音と出会った頃に戻るのだ。まるでゲームの世界だと黒葉は思ってしまう。

 それでも、葵音に会えるのだ。幸せな時間も確かにある。それだけが黒葉にとって幸せな時間だった。


 時々妙に体が温かくなったり、誰かに呼ばれているような気がしたけれど、それでも葵音から離れるのが怖くて無視をしてしまった。


 そんな時だった。
 新月の日を見つめたときだった。
 また、星詠みの力を感じた。あの夢をまた見るのだろうか。そう思って、黒葉は怯えてしまっていた。


 けれど、それは違った。

 薄暗い部屋で、葵音が一人泣いていた。
 どうして泣いているのだろう。
 なんでそんなに大粒の涙をたくさん溢しながして泣いているのだろうか。


 黒葉は必死に手を伸ばして、泣き続ける葵音に近づいた。
 彼に触れそうになった時、今までいた場所を振り返った。葵音の家で暮らす穏やかで暖かい時間。そこにいれば幸せかもしれない。そう思った。

 けれど……目の前には泣いている彼がいるのだ。


 「泣いている葵音さんを放っておけないよ。私が抱きしめてあげないと。」


 暗闇の中の葵音に触れた瞬間。
 全てが真っ白になり、眩しさを感じて黒葉は目を瞑った。