「やっぱり出来る人は違うなー!」



うんうん頷いて納得している。



「や、わたし授業聞いてなかったよ?」



「嘘ばっかりー!一之瀬さんの優秀っぷりは去年から有名なんだからね!」



「何それ知らない。多分それ、わたしじゃないよ。

よく似た人と勘違いしているだけでしょ」



「冗談はよしなって!

このあたしが知ってんだから!」



肩をぽんと叩いてからからと笑いながら教室に入っていった。



教科書は持っていなかった。



……名前聞き忘れた。



こういう間抜けなことばかりだからわたしにはいつまでも友達が出来ないんだと思う。



立ち尽くしていると、通行の邪魔になっている事に気づき、自分の席に早足で戻っていく。



窓の外は出かけるのにぴったりな空模様だ。



思わず写真に収めようとして、誰にもわたしがあの"わたし"だと気付かれたらいけないんだったと思い出した。