残酷すぎる現実に和がショックを受けていた時、どこで和のことを知ったのか、病室に叔母の典子が尋ねてきた。突然の訪問客に和は動揺した。

典子は親戚で集まった時に来るか来ないかわからない人だ。和が会った回数も数えるほどしかない。

「倒れたんだって?あんたね、こんなになるまで溜め込んでダメじゃない!」

病室に入ってくるなり、典子は和を叱った。

「家族はみんな心配してたわよ!連絡一つないって…。一体何があったの?」

典子は和のベッドの近くの椅子に座る。和は話すかどうか迷ったが、話しているうちに泣けてきて、最後は号泣していた。

そんな和を、典子は優しく抱きしめていた。和も嫌がることなく、それを受け止めていた。ずっと誰かにこうしてほしいと思っていたのかもしれない。

「和くん!そんなブラック企業なんて辞めちまいな!」

典子は目に怒りを宿しながら、和の顔を見つめる。叔母の言葉に和は戸惑った。

「で、でも…それじゃあ僕の仕事は……」

不安げな顔になる和に、典子はウインクをする。

「大丈夫!私のとこで働いたらいいよ!」

そして、入院が終わってすぐに和は会社を辞め、東京から離れることになった。叔母の運転する車に揺られ、この山の中の繁殖場へとやって来たのだ。