「えっ? サッカー部が廃部?」


 頭上から降ってくる言葉に、あたしは思わず上体を起こした。


 『お昼食べよ』そう言うロングヘアーの女が、あたしを呼んでいる。


 手入れを怠らないサラサラな髪の毛、理想のラインを描く小顔の輪郭に、二重の瞳。


 ほんのり入れたアイラインが魅力を引き立てる。


 この顔を見るといつも、あたしは嫉みを覚えるんだ。

 綺麗すぎなんだよ。


「今寝てたでしょ? トモミが机に突っ伏すと、数秒後には夢の中だもんねぇ」


「そんなことないってば」


 バカにしてくる舞子の額を、傷ひとつない綺麗な額を、ツンと突いてやった。


 もちろん嫉みの意味も、多少込めて。


「で、なんで廃部?」


「弱小だから」


「……えっ、理由それだけ?!」



 確かにあたしの中学校のサッカー部は、唖然となるほど弱いよ。


 部員も11人ぎりぎり。


 練習試合も年に、両指の折れが余る程度。


 でも真面目に練習はしてる……のかな?


 よく知らない。



「かわいそうかも」



 よく知らない方が可哀想なんじゃない?


 自分で言った言葉に、一応反論を付け加えておいた。



「ウチら、サッカー部に縁ないんだから、気にすることないよ」




 確かに縁はないけれど。