「鈴木は、前から2番目だ」
渋い先生の声に乗せて、鈴木の生気が少し抜けた気がした。
……良かった、隣じゃなくて。
これで嫌悪な腐れ縁から解放される。
あたしはホッと胸を撫で下ろして、椅子に腰を沈めた。
なかなか良い眺め。
皆の背中が見える。
背中から皆を見るのは良いけど、背中を誰かに見られるのは嫌。
振り返らないと、背後の状況が分からない。
何も見えない闇のように感じるから。
視界の先は明るい部分が大半だよ。
そりゃあ闇だってあるかもしれないけど、過去は背後だから。
それにほら、空はこんなにも明るいんだ。
広くて広くて。
椅子に腰を沈めたのは良いものの、
ひとつだけ疑問が宙ぶらりん。
「じゃあ、今日からはこの席順で過ごすように」
「ちょ、先生!」
「桜井なんだ?」
「なんで隣、空席なんですか?」
