「俺、桜井の隣が良いなー」
なんてことを言いながら、あたしの横を通りすぎて行ったのは、サッカー部の鈴木。
160cm弱あるあたしの目線と、水平にぶつかりそうな彼。
んまぁ……
10000歩譲って、彼のほうが5cm高い。
“桜井友美”
あたしの名前は、先生によって窓際の一番後ろ、と黒板に印された。
寝るのにはちょうど良いかも。
それに、大好きな空が覗ける。
空だけに限らず、あたしは風景という自然が好きだ。
和む。
自由で良いなぁって憧れる。
空。
表情を変えるその時に、とても惹かれるのだ。
クラスはというと、
数少ない席替えで、妙にざわついている。
「ウチの特等席取ったな、コノッ!」
「いてっ! あっ、舞子は一番前じゃん」
“島本舞子”
昼休みの仕返しのように思える額突きを受けたあたしは、頬に空気を溜める。
舞子とは小学校からの付き合い。
桜井の“さ”
島本の“し”
入学式に出逢って、隣どおしの席に座って
まだ語意はおろか、言葉もまともに知らない小学1年生のあたしが
[親友になろう]
そういきなり舞子に言ったんだ。
[いいよ」
同じく舞子も、いきなりそう答えたんだ。
それ以来、自称[親友]として
本当の[親友]になるまでずっと一緒にいた。
